デジタル人材育成の追い風!事業展開等リスキリング支援コース創設で実施すべき研修とは

デジタル人材育成の追い風!事業展開等リスキリング支援コース創設で実施すべき研修とは

2022年10月3日、岸田内閣がリスキリング支援として「5年で1兆円」という規模の助成金を創設すると発表しました。それが、人材開発支援助成金に新たに設けられた「事業展開等リスキリング支援コース」です。今回は、この助成金の概要や利用のメリット、具体的にどのような研修や講座を受講させればよいのかについてお伝えします。

事業展開等リスキリング支援コースの概要

早速、事業展開等リスキリング支援コース(以下、リスキリング支援コース)の概要を見ていきましょう。リスキリング支援コースは、新しい分野への参入やデジタル・グリーンといった成長産業の技術を取り入れ、業務効率化などを図るために必要な人材育成にかかる、訓練費用および期間中の賃金が支給される制度です。以下3つの取り組みが、助成金の支給対象となります。

  • 事業展開
  • デジタル・DX化
  • グリーン・カーボンニュートラル化

具体的な例をぞれぞれ見てみましょう。

事業展開とは

事業展開は、「新たな製品を製造したり、新たな商品やサービスを提供することなどにより、新たな分野に進出すること。このほか、事業や業種の転換や、既存事業の中で製品の製造方法、商品やサービスの提供方法を変更する場合も事業展開にあたる」と説明されています。

具体例として挙げられているのは、以下4つです。

  • 新商品や新サービスの開発、製造、提供又は販売を開始する
  • 日本料理店が、フランス料理店を新たに開業する
  • 繊維業を営む事業主が、医療機器の製造など、医療分野の事業を新たに開始する
  • 料理教室を経営していたが、オンラインサービスを新たに開始する

ここで重要になるのは、事業展開の定義です。既存商品の製造方法や既存サービスの提供方法を変えることも事業展開にあたるとされています。新規事業の立ち上げや事業転換よりも、ハードルが下がるといえるでしょう。

デジタル・DX化とは

デジタル・DX化は、「デジタル技術を活用して、業務の効率化を図ることや、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するなどし、競争上の優位性を確立すること」だとされています。

具体例としては、次のようなものが挙げられています。

  • ITツールの活用や電子契約システムを導入し、社内のペーパーレス化を進めた
  • アプリを開発し、顧客が待ち時間を見えるようにした
  • 顔認証やQRコードなどによるチェックインサービスを導入し手続きを簡略化した

デジタル・DX化については、比較的わかりやすいのではないでしょうか。例えば、予約システム・アプリを開発、予約頻度から次回について提案する、リモートロックを利用して物品の受け渡しをスムーズにする、商品やサービスの利用状況を定期的にお知らせし、最適なプランをAIに提案させるなどが考えられます。

グリーン・カーボンニュートラル化とは

グリーン・カーボンニュートラル化は、「徹底した省エネ、再生可能エネルギーの活用などにより、CO2などの温室効果ガスの排出を全体としてゼロにすること」です。事例として挙げられているのは、以下のようなものです。

  • 農薬の散布にトラクターを使用していたが、ドローンを導入した
  • 風力発電機や太陽光パネルを導入した

こちらは弊社の領域外ですので、詳細については割愛させていただきます。

支給対象訓練

人材育成のための研修が助成金支給対象だと認定されるためには、以下3つの条件を満たしていなければなりません。

  • 研修時間10時間以上
  • OJTではないこと(OFF-JTであること)
  • 業務に関連する研修で、以下2つのいずれかに該当すること
    事業展開をする場合:新たな分野で必要となる専門的な知識や技能を習得させる研修
    事業展開をしない場合:デジタル化・DX化またはグリーン・カーボンニュートラル化を促進するために必要な知識や技能を習得させる研修

なお、助成金を使用して人材育成を実施したい場合、訓練開始日の1ヵ月前までに計画届を提出しておく必要があります。

助成率・助成額

助成率と助成額は、以下の表のとおりです。なお、中小企業の定義は事業によって異なり、主に資本金や従業員数などによって定められています。詳細は、厚生労働省の人材開発支援助成金のページをご覧ください。

助成率・助成限度額(研修期間中の賃金に対する支援)

経費助成率 賃金助成率(1人1時間) 1事業所1年度あたりの助成限度額
中小企業 大企業 中小企業 大企業
75% 60% 960円 480円 1億円

受講者1人あたりの経費助成限度額

10h以上100h未満 100h以上200h未満 200h以上
中小企業 大企業 中小企業 大企業 中小企業 大企業
30万円 20万円 40万円 25万円 50万円 30万円

次に、中小企業と大企業の助成金を試算してみましょう。

試算すればわかる中小企業への手厚い助成額!

ここでは、弊社のデジタルマーケティング総合講座を例にします。

大企業の例

10日間で50時間の研修を10名に受講させるとしましょう。研修費用は1名あたり396,000円です。その場合の助成額は以下のとおりです。

講座料金:396,000円(税込)
経費助成:396,000円×60%=237,600円(上限20万円)
賃金助成:480円×50時間=24,000円
合計:200,000円+24,000円=224,000円
差額:396,000円-224,000円=172,000円
10名分費用:1,720,000円

研修費用と助成金額との差額は172,000円です。助成金を利用すれば、約43%の費用負担で受講させることができます。受講者1人当たりの経費助成限度額を超過していますので、その分は差し引かれることになります。

中小企業の例

こちらは、2名に受講させるとしましょう。

講座料金:396,000円(税込)
経費助成:396,000円×75%=297,000円(上限30万円)
賃金助成:960円×50時間=48,000円
合計:297,000円+48,000円=345,000円
差額:396,000円-345,000円=51,000円
2名分費用:102,000円

中小企業の場合、約13%の費用負担で受講可能です。中小企業は助成率が大企業よりも高いですから、ぜひこの助成金を活用していただきたいと思います。なお、受講者1人あたりの経費助成限度額も、この試算では超過していません。

事業展開等リスキリング支援コースの対象となる研修・講座

今回のポイントである事業展開またはデジタル化・DX化の促進が、助成金支給の分岐点だといえるでしょう。しかし、その点を押さえていれば、幅広い研修が助成金支給対象になると解釈できます。具体的に、事業展開の具体例に沿って考えてみましょう。

  • 商品やサービスのアプリを開発し、新たな販路を開拓する
  • 既存の会社ホームページをアクセス解析し、新たな商品を開発する
  • 業務効率化およびペーパーレス化促進のためにExcelを活用する

上記のような事例は、おそらく助成金の支給対象になると考えられます。

アプリ開発の場合

自社商品やサービスの新たな販路を開拓する目的で、スマホアプリを開発できる人材を育成したいと考えたとしましょう。その場合、プログラミング講座の受講をおすすめします。Androidのアプリは、JavaやPythonで開発されることが多いからです。

インターネットを経由しての電子商取引は、年々増加する傾向にあります。経産省の市場調査では、2021年の市場規模が20.7兆円(前年比7.35%増)と、いっそう拡大しました。総務省の調べでは、スマホの普及率は2016年時点でPCに追いつき、その後も増加を続けています。

アクセス解析の場合

自社サイトを運用しているものの、なかなか売り上げが伸びないため、原因分析をして新たな商品やサービスを開発したいとしましょう。このようなケースでは、WebマーケティングやGoogleアナリティクス講座がおすすめです。

Webマーケティングでは、Webサイト構築から、集客、アクセス解析、改善まで、Webマーケティングの全体像がつかめるようになります。Googleアナリティクスによるアクセス解析を習得すれば、自社サイトの現状把握や原因分析ができるようになり、隠れたニーズの発見につながります。

ペーパーレス化や業務効率化の場合

発注書や請求書などを紙管理からデータ管理へと移行する場合や、グラフ・表作成のスピードアップ、データ分析能力の向上を図る場合、Excel講座の受講でペーパーレス化や業務効率化の促進が可能です。

Excelには便利な機能がたくさんありますが、実はあまり活用されていないのではないかというのが弊社の印象です。ExcelのようなOffice系ソフトは、OJTで業務に必要な機能を教わることが多く、体系的に学習していない方が少なくありません。

まとめ

リスキリング支援コースは、全体として「5年で1兆円」という規模の大きさもさることながら、1事業所1年度あたりの助成限度額が、1億円ということも注目を集める理由のひとつです。特に中小企業は助成率が高いため、研修での支払金額を助成額が上回るケースも珍しくありません。

新規事業やデジタル化・DX化を考えていながらも、資金面の見通しが厳しかった企業にとって、今回のリスキリング支援コースは、人材育成のための格好の機会だといえるでしょう。この機会をぜひ有効に活用してください。

この記事を書いた人

吉野竜司|Ryuzi Yoshino株式会社アイクラウド 代表取締役CEO

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