人材開発支援助成金が改正され、雇用関係助成金ポータルで電子申請できる助成金が大幅に拡充されました。今回は、まだあまり知られていない雇用関係助成金ポータル(以下、助成金ポータル)を取り上げ、助成金ポータルでできることや電子申請可能な助成金一覧、申請前の準備などについてお伝えします。
雇用関係助成金ポータルとは?
雇用関係助成金ポータル(以下、助成金ポータル)とは、人材開発支援助成金(以下、助成金)をはじめとして、厚労省が管轄する助成金を電子申請できるWebサイトのことです。こちらの記事 で、助成金の4月改正の内容をご紹介しましたが、それに次ぐ6月の改正で、助成金ポータルの機能拡充が発表されました。
実は、ポータルが開設されたのは、2023年4月です。しかし、開設時には電子申請できる助成金が2つだったこともあってか、認知度はそれほど高くないようでした。今回、6月の改正で、電子申請できる助成金が大幅に拡充され、人材開発支援助成金の電子申請も可能になりました。
助成金ポータル開設の目的
助成金ポータルが開設された目的は、助成金申請の利便性向上です。具体的には、以下の3点だといっていいでしょう。
- 申請書提出のための移動や待ち時間を削減
- 窓口の受付時間や休日にかかわらずいつでも申請や確認が可能
- 基本的な情報を何度も入力しないで済む省力化
助成金申請でもっとも時間を費やすことのひとつが、労働局への移動や順番待ちの時間だといっても過言ではありません。この時間が削減され、すべてほかのことに回せると考えるだけでも、便利さを実感できるでしょう。
窓口が開いている時間に書類を提出に行かなければと、スケジュールを合わせる必要もありません。申請後の状況確認も、時間を気にすることだけでなく、待ち時間もゼロで確認可能です。
電子申請なら、手書きを入力で済ませられます。紙の申請書では会社名や住所、電話番号など、基本的な情報を何度も記入する必要がありましたが、同じ情報をほかの入力欄に反映させることも可能です。
助成金ポータルは、助成金申請の手続きにかかっていた時間や労力などのコストの低減に大きく貢献しているといえるでしょう。
助成金ポータルでできること
助成金ポータルでできるのは、以下のことです。
- 助成金の電子申請(代理申請を含む)
- 申請状況の確認
- 助成金の検索
助成金の電子申請と代理申請ができます。電子申請は、書類の作成はもちろんのこと、助成金ポータル上で提出も可能です。審査中の問い合わせや審査後の通知も助成金ポータル上で行われます。何らかの事情による申請取り下げも可能です。
代理人による申請の場合、まず事業主が代理人を設定しなければなりません。申請後の問い合わせには代理人が対応し、審査結果の確認もできますが、通知書の閲覧は事業主に限られています。
申請状況の確認が24時間365日(メンテナンスを除く)可能になるのも、助成金ポータルの魅力のひとつといえるでしょう。
また、そもそもどのような助成金があるのか検索することも可能です。内容や対象者、キーワードなどで利用可能な助成金を絞り込むこともできます。では、次に助成金ポータルで電子申請可能な助成金を見てみましょう。
助成金ポータルで申請可能な助成金
2023年6月26日の時点で、電子申請が可能な助成金は、以下のとおりです。助成金9つ全36コースとなっています。
■労働移動支援助成金(2)
■中途採用等支援助成金(2)
■トライアル雇用助成金(4)
- 一般トライアルコース ※2023年4月から電子申請受付開始
- 障害者トライアルコース
- 障害者短時間トライアルコース
- 若年・女性建設労働者トライアルコース
■地域雇用開発助成金(2)
■人材確保等支援助成金(7)
- 介護福祉機器助成コース
- 中小企業団体助成コース
- 建設キャリアアップシステム等普及促進コース
- 若年者及び女性に魅力ある職場づくり事業コース(建設分野)
- 作業員宿舎等設置助成コース(建設分野)
- 外国人労働者就労環境整備助成コース
- テレワークコース
■通年雇用助成金(1)
■キャリアアップ助成金(6)
- 正社員化コース ※電子申請受付開始2023年4月から
- 障害者正社員化コース
- 賃金規定等改定コース
- 賃金規定等共通化コース
- 賞与・退職金制度導入コース
- 短時間労働者労働時間延長コース
■両立支援等助成金(5)
- 出生時両立支援コース
- 介護離職防止支援コース
- 育児休業等支援コース
- 新型コロナウイルス感染症に関する母性健康管理措置による休暇取得支援コース
- 不妊治療両立支援コース
■人材開発支援助成金(7)
- 人材育成支援コース
- 教育訓練休暇等付与コース
- 建設労働者認定訓練コース
- 建設労働者技能実習コース
- 障害者職業能力開発コース
- 人への投資促進コース
- 事業展開等リスキリング支援コース
雇用関係助成金ポータルの利用準備や注意点について
助成金ポータルを利用するには事前準備が必要となります。
- GビズIDの取得
- 初回ログインとアカウント作成
- 支払方法・受取人住所届の登録
GビズIDとは、各種行政サービスを受けるための共通アカウントです。各種行政サービスがどの範囲までを意味するのかといいますと、厚労省や経産省、中小企業庁など省庁を問わないだけでなく、自治体のサービスも、このGビズIDがあれば利用可能となります。
GビズIDが作成されたら、次に行うのが、助成金ポータルの初回ログインとアカウント作成です。GビズIDは各種行政サービス共通のIDのため、助成金ポータルを利用するために必要な登録手続きとお考え下さい。初回ログイン時に、事業所の情報を入力する必要があります。
事業所情報を登録後、助成金の支払方法と受取人住所届の提出も必須です。こちらは審査があります。労働局からのコメントで書類の不備などを指摘された場合には、追加で書類を提出しましょう。支払方法・受取人届のステータスが「審査完了」となったら、事前準備は完了です。
なお、2021年9月にデジタル庁が設置されてから、行政サービスのインフラ整備をはじめとして、オンライン化や行政手数料のキャッシュレス払い対応、IDの共通化、地方自治体のシステム標準化などが進められてきました。このGビズIDもそのひとつで、行政サービスが改善されていると感じます。
利用上の注意事項
助成金ポータルの利用には、いくつかの注意事項があります。ご紹介しましょう。
- 紙による申請の場合、助成金ポータルで内容確認できない
- 計画届などを紙で提出した場合、同一の取組内容に対する支給申請を重複してポータルから提出できない
- 助成金の申請が初めての場合(紙または電子申請のいずれでも)や、申請にあたって不安な点や不明な点がある場合、できる限り管轄の労働局の窓口へ行くことが推奨されている
紙で申請した案件については、助成金ポータルで内容確認できません。助成金ポータルで確認できるのは、電子申請した案件のみです。また、紙で申請した案件を、後から電子申請に変更することもできません。
紙または電子申請に関わらず、助成金の申請が初めての場合には、不明点や疑問点の解消のために労働局の窓口を訪問することが推奨されています。弊社としましても、初回申請の場合は、後学のため窓口へ足を運んでおかれることをおすすめします。
助成金ポータル関連の情報・リンク
助成金ポータル関係の情報やリンクをまとめましたので、よろしければご活用ください。
・雇用関係助成金ポータル
https://www.esop.mhlw.go.jp
・助成金ポータル電子申請マニュアル
https://www.esop.mhlw.go.jp/operation-manual
・Youtube厚生労働省チャンネル
「雇用関係助成金ポータルのご案内(事業主編)」(5分39秒)
https://www.youtube.com/watch?v=DESa10AeBNY
・GビズIDの取得方法
https://gbiz-id.go.jp/top/
・GビズIDで利用できる行政サービス一覧
https://gbiz-id.go.jp/top/service_list/service_list.html
まとめ
雇用助関係助成金ポータルで電子申請ができるようになったことを受けて、企業が助成金申請要する時間や労力は大きく削減されることになりました。助成金申請の利便性は確実に向上したといえるでしょう。
助成金が申請しやすくなったことで、利用がより一層広まることを願います。助成金が多くの企業に活用され、デジタル人材の育成が促進されることは、弊社にとっても喜ばしいことです。