AIの業務活用が急速に広がるなか、多くの企業がAI人材の育成を急務と捉えています。しかし「社内で何をどこまで教えればよいのか」「自社に合った研修サービスをどう選べばよいのか」と悩む担当者は少なくありません。
本記事では、AI研修の目的や具体的な内容、サービスを選ぶポイントを解説します。実際に業務でAIを活用している方々への独自アンケート結果も交え、実践的な情報を紹介します。
AI研修とは?
AI研修とは、企業がAI技術を効果的に活用するために必要な知識とスキルを社員に習得させる、体系的な教育プログラムです。
近年、ChatGPTやCopilotをはじめとする生成AIの登場により、AIは一気に身近なものとなりました。資料作成やプログラミング、戦略策定など、職種を問わず幅広い業務を効率化できます。一方で、機密情報の漏洩リスクやハルシネーションといった課題もあります。
経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2030年にはAI人材が約12.4万人不足すると試算されています。 さらに、新卒のAI人材も毎年わずか300人程度にとどまる見込みです。さらに、優秀なAI人材が海外企業へ流出する傾向もあり、世界的な人材獲得競争は一層激しさを増しています。こうした状況のなかで、自社内の人材を育成することは、企業の競争力を高めるうえで欠かせない取り組みとなっています。
出典:経済産業省ウェブサイト
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/jinzai/houkokusyo.pdf
AI研修の主な目的
AI技術の急速な発展にともない、企業がAI研修を実施する主な目的は多岐にわたります。単にツールの使い方を教えるだけでなく、企業全体の競争力強化やDX推進の基盤づくりを目指すものです。ここでは、企業がAI研修を導入する主な目的を5つ紹介します。
組織のリテラシー向上
AIリテラシーとは、AIの基本的な仕組みや使い方、注意すべき倫理面を理解し、正しく判断・行動できる力のことです。組織全体でAIリテラシーを高めることは、DXを進めるうえで欠かせません。共通の知識や考え方を持つことで、部門間のコミュニケーションがスムーズになり、プロジェクトの推進力が向上します。反対に、リテラシーが不足していると、情報漏えいなどのセキュリティリスクが高まり、DXの取り組みそのものが停滞するおそれがあります。
業務効率化
AIツールを活用すれば、定型業務の自動化やデータ分析による最適化が進み、社員はより創造的な業務に集中できるようになります。たとえば、議事録作成や契約書チェック、顧客データの分析など、時間のかかる作業を大幅に効率化できます。AIが得意とする反復作業や大量データの処理を任せることで、戦略立案や顧客との関係構築といった、より付加価値の高い業務に時間を割けるようになります。
競争力アップ
AIを活用することで、データに基づいた意思決定が可能になり、市場での優位性を高められます。顧客の購買履歴や行動パターンを分析して需要を予測したり、市場トレンドをリアルタイムで把握したりすることもできます。競合他社よりも早く、的確な判断を下せるようになります。
データ活用促進
AIによる高度なデータ分析は、経営戦略の高度化や、過去データに基づく高精度な予測を可能にします。たとえば、製造業では設備稼働データから故障を事前に察知する「予知保全」、金融業では取引データをもとに不正を見抜く「異常検知」など、業界ごとに多様な活用が進んでいます。蓄積してきた膨大なデータをAIで分析することで、情報を戦略的な資産へと変換できます。これにより、勘や経験に頼った判断から、データを活用した確実な意思決定を実現できます。
イノベーション創出
AIは、新たなビジネスモデルの開発や顧客体験の革新を支援する「創造性のパートナー」としての側面を持っています。たとえば、パーソナライズ広告やレコメンデーションシステムを活用すれば、顧客一人ひとりに最適化された体験を提供できます。また、AIが膨大なデータから新しいパターンや関連性を発見することで、人間の発想だけでは得られないアイデアが生まれることもあります。AIは単なる効率化ツールではなく、イノベーションを生み出すパートナーとしての役割も果たすのです。
【独自アンケート】業務におけるAIの用途
AI研修の目的を考えるうえで、まずは多くのビジネスパーソンがどのようにAIを活用しているかを把握することが重要です。そこで、業務でAIを利用している全国の男女150名 を対象に「業務でAIをどのような用途に利用していますか?」というアンケート調査を実施しました。
- 文章作成・要約・翻訳:65.3%
- 企画・アイデア出し:33.3%
- データ分析・レポート作成:32.7%
- 画像・デザイン生成:22.7%
- コーディング・プログラミング補助:14.0%
- その他:14.0%
最も多かったのは「文章作成・要約・翻訳」で、6割以上が日常的に活用しています。 メールや報告書の作成、議事録作成といった文書業務で、AIが既に実用レベルで浸透していることがわかります。また、企画やアイデア出し、データ分析といったクリエイティブな業務でも3人に1人が活用しています。このアンケート結果から、AIはすでに多くのビジネスパーソンの日常業務に溶け込んでおり、特別なスキルがなくても活用できるレベルまで身近になっていることがわかります。
調査データ引用元:https://www.icloud.co.jp/article/post-3617.html
AI研修の主な内容
AI研修では、どのような知識やスキルを身につけられるのでしょうか。ここでは、企業で実施される代表的な7つの研修内容を紹介します。
AIの基礎とリテラシーに関する研修
AI初心者や非エンジニア職を対象とした、AIの基本を学ぶ研修です。AIとは何か、機械学習やディープラーニングの違い、生成AIの仕組みといった基礎知識を習得します。また、AIの活用事例や倫理的配慮、セキュリティ面での留意点など、実務で必要となる幅広い知識を学べます。
AIのビジネス活用に関する研修
営業、マーケティング、人事、経理など、非エンジニア職が実務でAIを活用するための研修です。ChatGPTやCopilotといったツールの使い方、効果的なプロンプトの作成方法、業務への導入プロセスなどを学びます。業種や職種ごとの活用事例を交えながら、明日からすぐに使えるスキルを習得できます。
AIを用いたデータ分析に関する研修
AIを活用してデータ分析を行うための研修で、データの収集から前処理、分析、可視化までの一連のプロセスを学びます。統計学の基礎知識や、ExcelやBIツールを使った分析手法、データの読み解き方などを習得します。プログラミング知識がなくても、ビジネス現場でデータを活用した意思決定ができるようになることを目指します。
プロンプトエンジニアリングに関する研修
プロンプトエンジニアリングとは、生成AIに対して適切なプロンプトを与えることで、高品質な出力を得るための技術です。同じ質問でも、プロンプトの書き方次第でAIの回答の質は大きく変わります。この研修では、AIから望む回答を引き出すための具体的なテクニックや、役割設定、ステップバイステップでの指示方法、出力形式の指定といった実践的なスキルを学びます。短期間で習得できる即効性の高いスキルのため、AI研修のなかでも人気が高い内容です。
AIを用いたプログラミング・アプリ開発に関する研修
Pythonなどのプログラミング言語を使って、AIモデルやアプリケーションを開発するための研修です。プログラミングの基礎から、機械学習ライブラリの使い方、AIモデルの実装、Webアプリケーションへの組み込みまで、実践的な開発スキルを学びます。AI機能を自社サービスに組み込みたい企業や、AIの内製化を目指す企業にとって重要な研修内容です。
機械学習・ディープラーニングに関する研修
AIエンジニアやデータサイエンティストといった高度な専門人材を育成するための研修です。機械学習のアルゴリズム(教師あり学習、教師なし学習、強化学習など)の理論や、ニューラルネットワークの仕組み、ディープラーニングのフレームワーク(TensorFlowやPyTorchなど)の使い方を学びます。
AIの資格取得に関する研修
G検定(ジェネラリスト検定)、E資格(エンジニア資格)、DS検定(データサイエンティスト検定)など、AI関連の資格取得を目指す研修です。資格を取得することで、社員のスキルレベルを客観的に証明できるほか、学習意欲の向上やキャリア形成にもつながります。
【独自アンケート】企業が抱えるAI利用に向けた課題
AI研修では、社員がAIを安全かつ効果的に活用できるよう、基礎知識から実践スキルまでを体系的に学びます。 では、企業は実際にどのような課題を感じているのでしょうか。業務でAIを利用している全国の男女150名を対象に「業務でAIを利用するうえで、最も大きな課題だと感じるものは何ですか?」という質問を行いました。結果は以下のとおりです。
- 情報漏えいやセキュリティ面の不安:34.0%
- 成果物の正確性・信頼性に不安がある:32.7%
- 社内ルールやガイドラインの不足:12.7%
- 操作・活用方法が分からない:8.0%
- 社内理解・文化が追いついていない:8.0%
- その他:4.7%
最も多かったのは「情報漏えいやセキュリティ面の不安」で、3人に1人以上が課題と感じています。次いで「成果物の正確性・信頼性に不安がある」が約3割で、AIが生成した情報の正確性やハルシネーションへの不安が表れています。これらの課題を解決するには、適切なルールづくりと体系的な研修が不可欠です。AI研修では、セキュリティリスクへの対処法や、AIの出力を正しく評価する方法も学ぶことができます。
調査データ引用元:https://www.icloud.co.jp/article/post-3617.html
AI研修の導入がおすすめの企業
ここまで解説してきたAI研修のメリットや内容を踏まえて、どのような企業がAI研修を導入すべきなのかを紹介します。以下に該当する企業は、AI研修の導入を積極的に検討するとよいでしょう。
- DX推進を本格的に進めたい企業
- 業務効率化やコスト削減を図りたい企業
- AI人材を採用するのが難しく、社内育成を検討している企業
- データ活用を推進し、データドリブンな意思決定を実現したい企業
- 新規事業やイノベーション創出を目指している企業
- 社員のITリテラシーに差があり、標準化を図りたい企業
- セキュリティリスクやコンプライアンスへの対応を強化したい企業
- AIツールを既に導入しているが、十分に活用しきれていない企業
- 競合他社に先駆けてAI活用で優位性を確立したい企業
- 若手社員のスキルアップや定着率向上を目指している企業
とくに、AIの活用が進んでいる業界や、人手不足に悩む業界では、AI研修の導入が急務となっています。早期にAI人材を育成することで、競合他社に対する優位性を築くことができるでしょう。こちらの記事では、生成AI研修について解説しています。カリキュラムや選び方も取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。
AI研修のタイプ|対象者別の分類
AI研修サービスは、対象者や目的に応じてさまざまなタイプがあります。自社の課題や人材育成の目的に合った研修を選ぶことで、より高い効果を得ることができます。
幅広い研修コンテンツを提供する会社
初心者向けのAIリテラシー研修から、上級者向けの専門技術研修まで、幅広いレベルと内容をカバーしているタイプです。IT・AI入門者から、AI・データサイエンス領域のプロフェッショナルを目指すエンジニアまで対応しています。全社的にAI人材を育成したい企業や、段階的・網羅的な育成計画を立てたい企業に適しています。
営業・マーケティング担当者向けの研修コンテンツを提供する会社
非エンジニア職が実務でAIを活用するためのスキルに特化したタイプです。営業職向けの提案資料作成支援や、マーケティング職向けの市場分析など、職種特有の業務にAIをどう活用するかを学べます。技術的な深い知識よりも、日常業務での即戦力となるスキルを重視する企業に向いています。
エンジニア向けの研修コンテンツを提供する会社
AI技術の実装・運用能力の習得に特化したタイプで、ITエンジニア向けの専門的な内容です。機械学習やディープラーニング、データサイエンスの理論と実装を学べます。AI開発の内製化を目指す企業や、AI領域のエンジニア育成を検討している企業に適しています。
マネジメント層向けの研修コンテンツを提供する会社
経営層や管理職がAIの戦略的価値とリスクを理解し、全社的なAI戦略を主導するための研修を提供するタイプです。AIガバナンス、投資判断、組織変革マネジメント、ベンダー選定といった経営視点での知識を学べます。トップダウンでDXを推進したい企業に向いています。
アイクラウド研修サービスでは、貴社のご要望に合わせて、完全オリジナルの研修カリキュラムを構築いたします。研修時間や会場、受講人数はもちろん「必要な技術を」「必要な方に」最適な形でお届けするオーダーメイド型の研修をご提供します。
AI研修サービスを選ぶ際のポイント
AI研修サービスは数多く存在するため、自社に最適なものを見極めることが大切です。ここでは、導入で失敗しないための5つの選定ポイントを紹介します。
目的達成や課題解決につながる研修内容か
まず確認すべきは、その研修内容が自社の目的や課題に合っているかどうかです。目的があいまいなまま研修を実施しても、十分な効果は得られません。事前に「何のために研修を行うのか」「どのような成果を期待するのか」といったゴールを明確に設定することが大切です。たとえば、業務効率化が目的であれば生成AIの実務活用を中心とした研修、AI開発の内製化を目指す場合は機械学習やプログラミングに重点を置いた研修が適しています。また、自社の業務課題に直結した演習や事例が含まれているかどうかも重要なポイントです。実際の業務データを使った課題解決型の研修であれば、学んだ内容をすぐに実務に活かせます。
レベルや対象者に応じて内容をカスタマイズできるか
社内には、職種や担当業務だけでなく、スキルレベルにも大きな差があります。そのため、全員に同じ内容の研修を実施しても十分な成果は得られません。初心者にとって難しすぎる内容や、上級者にとって物足りない内容では、どちらも学習効果が下がってしまいます。受講者のレベル・職種・業務内容に応じて、内容を柔軟にカスタマイズできる研修サービスを選ぶことで、組織内のスキルギャップを効果的に解消できます。また、オーダーメイド型の研修を提供している会社であれば、自社の課題や受講者の特性に合わせて、最適なカリキュラムを設計してもらうことが可能です。
現場環境に合った研修方法か
研修の実施方法は、集合研修、オンライン研修、eラーニング、ハイブリッド型などさまざまです。複数拠点に社員が分かれている企業や、リモートワーク中心の企業にはオンライン形式が参加しやすいでしょう。一方、実務スキルの習得やチーム交流を重視する場合は、対面形式の方が効果的です。ハイブリッド形式は、柔軟性と効率性の両方を兼ね備えた選択肢となります。また、ワークショップ形式やハンズオン演習が含まれているかも重要です。実際に手を動かしながら学ぶことで、実践的なスキルが身につきやすくなります。
継続的なフォローアップがあるか
AI研修で得た知識やスキルを現場で活かし続けるためには、研修後の継続的なサポートが欠かせません。研修は受講して終わりではなく、実務で疑問が生じたときに質問できる環境や、復習用の教材、定期的なフォローアップ研修などがあることで、学んだ内容を確実に定着させることができます。たとえば、月1回のフォローアップセッションやチャットでの質問対応、進捗に応じた追加トレーニングなどを提供しているサービスを選ぶとよいでしょう。さらに、新しいAIツールの登場に合わせた追加研修や、実務への伴走支援が用意されているかどうかも、長期的な成長を支えるうえで重要なチェックポイントです。
助成金活用サポートの有無
AI研修は、厚生労働省の「人材開発支援助成金」など、各種助成金の対象となる場合があります。これらを活用すれば、研修費用を大幅に抑えることが可能です。ただし、助成金を受けるには、事前の計画届の提出や実績報告など、複雑な手続きが必要です。助成金の申請に不慣れな企業にとっては、この手続きが大きな負担となることも少なくありません。そのため、助成金申請サポートを提供している研修サービスを選ぶと安心です。申請の流れや必要書類の準備を専門家が支援してくれるため、手間を大幅に削減できます。
アイクラウド研修サービスでは、専門の社会保険労務士が助成金活用の相談から申請サポートまで対応しており、2013年1月から現在まで助成金受給率100%という実績を誇っています。助成金を上手に活用することで、費用対効果の高いAI研修を実現できるため、サポート体制が整ったサービスを選ぶことをおすすめします。
まとめ
AI研修は、企業の競争力維持と成長に欠かせない戦略的な投資です。業務効率化やDX推進、イノベーション創出を実現するためには、全社的なAIリテラシーの向上と、実務で活かせるスキルの習得が不可欠です。しかし、どのように研修を設計し、限られた予算や時間の中で効果を最大化するかに課題を感じている企業も少なくありません。そんななかで、目的に合った研修設計と継続的なサポート体制を持つパートナーの存在が重要になります。
アイクラウド研修サービスでは、こうした企業の課題に応えるため、お客様のニーズに合わせたオーダーメイドのAI研修を提供しています。助成金受給率100% の実績を持ち、専門の社会保険労務士が申請手続きを全面的にサポートするため、費用面での不安も解消できます。また、短期間で現場に貢献できる人材を育成するカリキュラムと、研修後の実務サポートを組み合わせることで、学びを定着させ、持続的なスキルアップを実現します。
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