社員向けに生成AI研修を実施したい。でも、20名、30名と人数が増えると、費用も気になります。東京都内の中小企業等なら、「DXリスキリング助成金」を利用できるかもしれません。
2026年度の助成率は、対象となる研修費用の75%。ただし、受講者1人・1研修あたり7万5,000円、1事業者あたり年度100万円という上限があり、研修時間や申請時期にも条件があります。
初めて調べる担当者が制度の全体像をつかみ、その後の研修選びや社内での予算検討まで進められるよう、アイクラウドの費用例を交えて整理しました。
東京都DXリスキリング助成金とは
東京都内の中小企業等が従業員にDX(デジタルトランスフォーメーション)関連の研修を受けさせる際、費用の一部を助成する制度です。運営しているのは公益財団法人東京しごと財団です。
DXとは、デジタル技術を使って仕事の進め方やサービスを改善すること。リスキリングは、そのために必要な知識や技能を新たに学ぶことを指します。生成AIの業務活用だけでなく、データ分析や業務自動化なども研修の候補になります。
個人が自分の受講費用を申請する制度ではありません。従業員を雇用する企業等が申請し、研修費用を負担します。
| まず確認したい項目 | 2026年度の主な内容 |
|---|
| 助成率 | 税抜の助成対象経費の75%(4分の3) |
| 1人あたりの上限 | 1人・1研修につき7万5,000円 |
| 企業あたりの上限 | 1申請企業等につき年度100万円(交付決定額の合計) |
| 対象企業 | 都内で事業を営む、要件を満たした中小企業等・個人事業主 |
| 対象者 | 申請企業等が雇用し、都内の事業所で常時勤務する従業員 |
| 研修時間 | 1研修あたり3時間以上10時間未満 |
| 交付申請 | 研修開始予定日の1か月前まで |
| 助成金の受け取り | 研修実施・支払い・実績報告・審査・請求を経た後払い |
例えば6時間の生成AI研修でも、内容や受講形式、申請企業・従業員の条件がそろえば助成対象となる可能性があります。一方、10時間ちょうどの研修は時間要件を満たしません。
自社は対象?会社と従業員の条件を確認
最初に分けて考えたいのが、「申請する会社の条件」と「受講する従業員の条件」です。会社が対象になっても、受講者全員が対象になるとは限りません。
会社の所在地と企業規模
原則として、東京都内に本店・支店等があり、所定の登記や都税関係の要件を満たす中小企業等が対象です。本社が都外にあっても、都内事業所の登記がある場合や、必要な届出・証明がある場合は申請できる可能性があります。
中小企業の規模は、資本金・出資総額と常時使用する従業員数のいずれか一方(または両方)で判断します。
| 業種 | 資本金・出資総額 | 従業員数 |
|---|
| 小売業・飲食業 | 5,000万円以下 | 50人以下 |
| サービス業 | 5,000万円以下 | 100人以下 |
| 卸売業 | 1億円以下 | 100人以下 |
| その他の業種 | 3億円以下 | 300人以下 |
規模の条件に当てはまっても、みなし大企業は対象外です。また、都税の未納がないこと、重大な法令違反がないことなど、ほかにも要件があります。業種の分類や例外は募集要項で確認してください。
受講するのは、都内で常時勤務する従業員
助成対象となるのは、申請する企業等が雇用し、都内の事業所で常時勤務する従業員です。代表者や個人事業主本人は対象外で、役員は雇用保険に加入している場合に従業員として扱われます。
雇用関係のない内定者や、他社から受け入れている派遣社員についても注意が必要です。受講者が過去の申請で同様の研修を受けていないことも条件に含まれます。
「東京に本社がある」「研修を東京で開催する」だけでは判断できません。申請者と受講者の雇用関係、普段勤務する事業所の所在地を確認します。
どんな研修が対象になる?時間・内容・形式のルール
東京都の制度は、研修名よりもカリキュラムと実施方法が重要です。ChatGPT、Microsoft Copilot、データ分析などを扱う場合でも、会社のDX推進に必要な知識・技能を学ぶ研修として計画されているかが判断材料になります。
3時間以上10時間未満。受講率も80%以上必要
対象研修の時間は、1研修あたり3時間以上10時間未満。10時間ちょうどは対象外です。昼休憩など賃金が発生しない休憩時間は含めず、eラーニングは標準学習時間で判断します。
受講者は総研修時間の80%以上を受講する必要があります。研修当日に欠席が出たときの扱いも含め、出席状況を記録できる体制が必要です。
研修は通常業務と分けたOFF-JTとして行い、業務命令に基づく労働時間として扱って所定の賃金を支払います。
公開講座と自社専用研修では、使える形式が違う
| 研修の種類 | 内容 | 対象候補となる受講形式 |
|---|
| レディメイド研修 | 教育機関が一般向けに募集している公開講座 | 対面、同時双方向のオンライン研修、所定のeラーニング |
| オーダーメイド研修 | 自社の従業員向けに外部の教育機関へ委託する研修 | 対面、同時双方向のオンライン研修 |
オーダーメイド研修は、録画動画を各自が視聴するだけの形式では対象になりません。また、教育機関が発行する見積書で、受講者1人・1研修単位の経費が分かることも必要です。
次のような研修も対象外です。
- サブスクリプション型・定額制の学び放題研修
- 親会社、グループ企業、顧問契約先など、所定の関係がある会社が提供する研修
- 通常の業務連絡や社内規程の説明など、知識・技能の習得を目的としない内容
- 交付決定前に開始した研修
「生成AIツールの操作説明を受ける」だけでなく、どの業務に活かすための研修なのかをカリキュラムに示せると、研修を選びやすくなります。ただし、対象可否を決めるのは東京しごと財団です。
助成金を使うと、会社はいくら支払う?
助成額の計算は基本的に、税抜の対象経費の75%です。ただし、1人・1研修につき7万5,000円が上限となります。例えば、1人あたり税抜12万円の研修なら75%は9万円ですが、助成の上限は7万5,000円です。年度100万円の上限も別にあります。
もう一つ大切なのが、助成金は後払いであることです。研修会社に支払う税込の総額を先に確保する必要があります。
アイクラウドの20名・30名向け研修費用で試算
アイクラウドの研修費用資料にある2つの金額を使い、助成額を計算します。以下は全員が受講要件を満たし、研修費用の全額が助成対象となった場合の試算です。実際の交付・受給事例ではありません。
| 比較する項目 | 20名:生成AIプロンプト実践研修 | 30名:生成AIリテラシー研修 |
|---|
| 研修費用(税抜) | 60万円 | 55万円 |
| 先に支払う税込額 | 66万円 | 60万5,000円 |
| 助成額の単純試算 | 45万円 | 41万2,500円 |
| 助成後の差し引き支出 | 21万円 | 19万2,500円 |
20名の例では、1人あたりの税抜研修費用は3万円です。助成額を1人2万2,500円と計算すると、20名で45万円。会社が税込66万円を支払い、この金額の助成を受けられた場合、差し引き支出は21万円となります。
30名の例は、55万円を30名で割ったときに端数が出ます。表の41万2,500円は総額に75%を掛けただけの数字で、申請様式の1人ごとの端数処理によって実際の助成額が変わる可能性があります。
税込額は消費税10%で計算しています。差し引き支出は入出金ベースの比較であり、企業ごとの消費税の申告・控除は考慮していません。また、ここにある金額は現在の一律料金や助成金の支給を保証するものではありません。見積内容や対象経費、受講者、審査結果によって変わります。
研修費以外で、助成対象になるもの・ならないもの
受講料のほか、教材費や研修に付随する登録料・管理料などは対象経費になる場合があります。オーダーメイド研修では、条件を満たすヒアリング料や会場費も候補です。
一方、消費税、パソコン等の購入費、通信費、交通費、宿泊費、振込手数料などは対象外です。会社が実際に負担した費用で、受講者1人・1研修単位の金額を算出できるものに限られます。
支払いは、申請企業等の口座から金融機関振込で行います。従業員個人による立替払いは認められません。
アイクラウドなら、どんな生成AI研修を検討できる?
助成金に合わせて講座を選ぶ前に、受講後に何ができるようになってほしいかを決めておくと、必要な研修時間や内容が見えてきます。
全社員が生成AIを安全に使える状態を目指すなら、情報漏洩・誤情報・著作権・社内ルールを扱う「生成AIリテラシー研修」が候補です。すでにツールを使っている部署なら、営業資料や社内文書などを題材に指示設計と出力検証を練習する研修が考えられます。
アイクラウドのプロンプト基礎研修は、標準3〜6時間を目安に、受講者のレベルや業務に合わせて調整できる法人向け研修です。時間だけで助成対象が決まるわけではありませんが、東京都の制度を検討する場合の相談候補になります。
一方、アイデジの生成AI活用実践研修は、公開されているプログラムが3日間・15時間です。この15時間のプログラムは東京都のDXリスキリング助成金の時間要件を満たしません。長時間の研修が必要な場合は、国の人材開発支援助成金など別制度の要件を確認することになります。
研修時間を助成金の条件に合わせて無理に短縮するより、学びたい内容と制度の両方を見て選ぶ方が実務的です。
申請から入金までの流れと、2026年度の期限
申請は、研修が終わってから行うものではありません。研修開始予定日の1か月前までに交付申請し、交付決定を受けた後に研修を実施する必要があります。
研修前にすること
研修の目的、対象部署、受講人数、研修時間、希望日程を整理します。研修会社から見積書とカリキュラムを取得し、募集要項に沿って交付申請します。
申請には、研修計画、助成対象額計算書、見積書、カリキュラムのほか、会社の所在地・納税状況や雇用関係などを確認する資料が必要です。初回申請かどうかや研修の種類によって提出物が変わるため、財団の書類提出チェックリストを使うと整理しやすくなります。
電子申請にはJグランツを利用でき、GビズIDプライムが必要です。紙申請も可能です。交付決定までの目安は審査が順調なら約3週間ですが、書類の不備などがあると研修開始日に間に合わない場合があります。交付決定を受ける前に研修を始めると、助成対象外になるため注意が必要です。
研修中・研修後にすること
交付決定後は、計画に沿って研修を実施します。出席状況や受講時間を記録し、申請企業等の口座から研修費用を振り込みます。
研修終了後は原則2か月以内に実績報告を提出します。レディメイド研修なら受講証明書など、オーダーメイド研修なら出席簿や研修実施報告書など、研修の種類に応じた書類が必要です。支払いを確認できる書類も提出します。
財団の審査後に助成額が確定し、所定の請求手続きを経て入金されます。公式FAQでは、助成金の請求書兼口座振替依頼書を提出してから振込まで、おおむね1か月が目安とされています。ただし、交付決定時の金額がそのまま最終支給額として保証されるわけではなく、入金時期も審査状況によって変わります。
2026年度の申請・研修スケジュール
| 項目 | 期間・期限 |
|---|
| 交付申請の受付 | 2026年3月1日〜2027年2月28日 |
| 対象となる研修の開始 | 2026年4月1日〜2027年3月31日 |
| 研修の終了 | 2027年8月31日まで |
| 各研修の交付申請 | 研修開始予定日の1か月前まで |
| 実績報告 | 原則、研修終了後2か月以内 |
申請受付の最終日と、各研修の申請期限は別です。例えば3月末開始の研修なら、2月末までに申請が必要です。受付期間中でも、予算を超えた場合は早期終了することがあります。
申請前に見落としやすいポイント
「対象になるはず」と思って、交付決定前に始めてしまう
交付申請を提出しただけでは受講開始の条件を満たしません。交付決定の通知を確認してから研修を始める必要があります。
受講者の条件と出席記録を確認していない
会社が対象でも、受講する社員の勤務地や雇用関係が条件と合わない場合があります。受講率80%以上を確認できるよう、証明書や出席簿について研修会社と事前にすり合わせておきます。
見積書が総額だけになっている
オーダーメイド研修は、1人・1研修単位の費用が分かる見積書が必要です。税抜対象経費と消費税、対象外経費も区別しておくと、助成額の試算と申請準備を進めやすくなります。
複数の研修をまとめて申し込み、入金が遅くなる
複数研修をまとめて申請することはできます。ただし、助成金の支給は申請した全研修の終了後です。最後の研修が先の日程だと、その分だけ入金も後になります。年度100万円の上限だけでなく、資金繰りも確認してください。
他の助成金と同じ研修で重ねて申請してしまう
同じ研修に対して、国や自治体のほかの助成金を併用することはできません。複数制度を検討するときは、研修内容と対象者、費用の範囲を整理し、各制度の窓口へ確認してください。
よくある質問
生成AI研修の内容や見積りについて相談したい方へ
相談前には、都内事業所の所在地、受講予定者の人数と勤務地、希望時期、研修で改善したい業務を整理しておくと、対象条件の確認や見積りの相談が進めやすくなります。
アイクラウドでは、生成AIの基礎研修から業務別の実践研修まで、対象者や目的に合わせた研修内容・時間・実施方法・費用をご相談いただけます。見積書やカリキュラムなど、研修会社側で用意する書類についても、検討段階で確認できます。
相談時には「東京都DXリスキリング助成金の利用を検討している」とあわせてお伝えください。申請主体は企業等であり、対象可否と助成額の最終判断は東京しごと財団が行います。
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